多分前の二回くらい書いていない。
この度また限界を迎えて、私の変な美容師の元を訪ねました。今回はかなり限界を迎えたので、
「あのさ、トリートメントしていい? 有料だけど」
と、割りと問答無用でトリートメントされました。
今回、私の変な美容師は、少しテンション低めでした。
あ、すみませんいつもかなりテンション低めです。
そこから更に低かったんです。
「ねえ、○○さん」
「なに?」
「なんでずっと、僕を指名してくれるの?」
おいおいなんだよその質問。
困るよ、困るよねそれ。
「仕上がりもいいし、持ちもいいから」
私は答えました。
「じゃあなんであんまり来てくれないの?」
「仕上がりもいいし、持ちもいいからだよ……」
私、下手すると三ヶ月以上行かないことがあります。
「そうか」
「なんかあった?」
「いや、僕、ばあちゃんの髪を切ってるんだけどね」
「へえ? 素敵じゃない」
「最初、美容師になったときに、母親の髪を切ってやろうと思って、道具を持って、実家に行ったんだ」
「それも素敵だね」
「でも母親が、自分はいいって言ってさ。いまだに僕に切らせないんだよね」
「それは……子どもの頃からよく知っている息子に髪に切られたくないのは、わかる気がするけど」
「なんで?」
「私も中学の同級生男子が握ってる寿司は食べたくない」
「なるほどー。でも母親さ、この間もばあちゃんの髪を切ってたら」
「素敵だよ、おばあさまの髪を切るの」
「ダメ出しするんだよ」
「え?」
「母親がめっちゃダメ出しするんだよ」
「そうなの?」
「あそこがダメだここがダメだ、バランスが悪いってさ」
「そう……」
「だから、○○さん何年も、時々だけど、なんで僕を指名してくれるのかなって思ってさ」
頭に話が、戻った訳です。
身内の意見は大きいね。母に肯定されない限り彼は前に進めない。
「まあ、僕も○○さん歴女だから時代劇の話しするの楽しいんだけどね」
歴女、言うな歴女。
その後、千円カットの話になりました。
「一回切ってもらおうかな」
恥ずかしながら私はこのとき、自分がどんな不遜な気持ちでそれを言ったのか、自覚があります。
「そういうことするの、やめて」
彼が言いました。
「後で僕が切るのも大変だし」
彼は不機嫌を露わにしました。
「からかい半分で、こんな風にされちゃったとか、そういうのやめて欲しい」
そう言われて、私は顔から火が出る思いがしました。
まさに私が「一回切ってもらおうかな」と言ったのは、そういう、侮った気持ちがあったからなのです。
彼は、全ての髪を切る人に対して、真摯な尊敬の念を決して忘れないのだなと思い知り、深く深く反省をしました。
私客だよ?
でも構わずそんなことを言う彼がとても好きなので、また切ってもらおうと思います。
- 2014/07/18(金) 13:49:07|
- 私の変な美容師
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