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菅野彰

菅野彰の日記です

「花屋の二階で 新装版」(キャラコミックス)/「小説Chara vol.33」(徳間書店)/「毎日晴天!」シリーズについて

 今日は「小説Chara vol.33」の発売日です。
 Twitterで「毎日晴天!」シリーズについて諸々呟きましたが、ツイートは流れてしまうではないかと気づいたので十一月の発行物だけでも日記にまとめます。 本当は2012年の全員サービスから再開したこのシリーズの、その後書き下ろしたものを全てまとめたいのですが、それはまた後ほど。とりあえず「毎日晴天!」のカテゴリーを作りましたので、この記事にある「毎日晴天!」というリンクをクリックしていただけると過去作品の告知も出てくる筈です。そしていざそれをしてみると、私は日記で全てを告知していないことに気づかざるを得ません。申し訳ありません。Twitterの告知だけになっていたものもあるようです。本当にごめんなさい。
 今月の発行物についてを先に、「毎日晴天!」についての諸々については後に書きます。

「小説Chara vol.33」11/21発行
 二宮悦巳先生が、「どこでも晴天!」という漫画を描き下ろしてくださっています。以前「小説Chara vol.29」にこの小説を書かせていただいたときに、とても二宮先生の描いた大河と秀のスーツ姿が見たかったのでリクエストしました。本当に素敵な漫画です。そしてほぼ全員が出て来ます。ほぼに漏れたのは丈でございます。ウオタツもおります。
 残念ながらコミカライズが終了しています。今後この二宮先生の漫画が何かの単行本に入る可能性は今のところ想像がつかないので、是非雑誌をお求めください。
 これからは二宮先生のこのシリーズに関するイラストは、私が文庫を出せたときに見ていただけるかと思います。それを大きな楽しみに、私もこの先を頑張ります。
 そして私の小説は、一本目は「SF作家は何度でも家出する」を書き下ろしました。コメディです。龍もウオタツも出て来ます。というか何故かこの二人が大活躍です。とても楽しく書きました。楽しいよ! こちらは可能であれば「明日晴れても 毎日晴天!10」を復習してみてください。その直後の達也になります。
 二本目は、「夢のころ、夢のまちにて。」を書き下ろしました。大切な話になりました。「夢のころ、夢の町で。 毎日晴天!11」にしか出てこない登場人物が突然出てくるので、良かったら復習してください。「僕らがもう大人だとしても 毎日晴天!7」も読んでいただけると、なお復習になるかと思います。
 楽しんでいただけますように。
 よろしくお願いします。

「花屋の二階で 新装版」(キャラコミックス)11/25発行
 二宮先生によるコミカライズの、最終巻になります。
 寂しいですが、とてもきれいな素敵な本です。毎回カバーを彩る美しい花が、楽しみでした。
 二宮先生、本当にお疲れ様でした。ありがとうございました。
 私はコメントと、短編小説「次男の恋人」を書き下ろさせていただきました。明信の意外かもしれない一面が書けた気がしています。
 楽しんでいただけると思います。
 よろしくお願いします。

「Chara Collection 2015」(AGF販売物)12/1通販受付開始
 AGFで販売された分厚い本が、通販されます。
 こちらには私は、勇太と真弓の話というか、ほぼ勇太の話「おまえのおらん俺」を書き下ろさせていただきました。
 通販サイトはこちらになります。
 シリアス寄りです。
 私にはとても思い入れのある、勇太の物語になりました。

「Chara全員サービス」近日発送
 すみません。これはもう入手が間に合わないものかと思われます。
 ここ四年、全員サービスには毎回「毎日晴天!」シリーズを書き下ろしています。
 今回は「女子会プラン男子会プラン」。
 右チーム左チームに分かれての、コメディです。
 お手元に届くことを、願っております。

 今月の発行物については以上です。
 ここからは私の「毎日晴天!」シリーズについての、個人的な話です。
 あ、その前に具体的な話を一つ。
 ドラマCDが、全員サービスを含めて7枚出ています。現在も購入可能なものもあります。版元のムービックか、Amazonなどでお求めください。
 「毎日晴天!5 竜頭町三丁目帯刀家の迷惑な日常」と、「毎日晴天! 番外編 君が段取りをする時間 (Chara全員サービスなのでこれは入手不可能です)」は私の完全書き下ろしで本編にはないサイドストーリーです。短編小説の書き下ろしもついています。
 ドラマCDについては、突然7枚目で止まってしまい続きを望んでくださる方の声も聞くのですが、実はレーベル自体がなくなってしまいました。私も残念ですが、7枚目から随分時間も経って、今後このキャストさん全員に集まっていただくのは不可能なのではと私個人としては思っています。もしかしたらお願いしたら引き受けてくださるかもしれませんが、みなさんかなりのご活躍です。それを影ながら拝見したいと思います。
 私は全員のキャストさんにとても感謝していますが、ツイートしたので一つだけ裏話のようなものを。
 ドラマCDが発売されることになったときに、もちろんそれはとても嬉しかったのですが、何もかもを担当さんに全てお任せしました。傍から見ると、ラジオドラマの脚本なども書いているのでこれは意外かもしれませんが、多分私はそんなには声優さんに詳しくないです。今も、お仕事をさせていただいた方の他は、かなり有名な方しかわからないです。大変失礼な話で申し訳ないことなのですが。すみません以下の話の前提として必要なので、私事情を語りました。
 そんな訳で、担当さんにキャスティングは全て委ねました。大河役には、制作サイドからは主にアニメで有名な声優さんが候補に挙がっていました。その声優さんのファンの方がきっと買ってくださるだろうという、アニメ漫画業界ではかなり手堅い私も知っている方で、私はその方で充分ありがたいと思っていました。
 担当さんから別の声優さんのボイスサンプルが送られていて、申し訳ないのですが日々の忙しさからなかなか聞けずにいました。担当さんに「早く聞いて欲しい」と言われて、何故だろうと思いながら聞きました。その声優さんは、当時海外ドラマや洋画の吹き替えを主にやってらっしゃって洋画では主演もしてらっしゃいましたが、アニメの仕事はまだほとんどなさっていませんでした。アニメや漫画の購買層からはやはり遠く、制作サイドは二の足を踏む、そういう条件の方でした。当時の話です。
 ボイスサンプルを聞いて、担当さんが一刻も早くそれを聞いて欲しいと私を急かした意味を、すぐに知りました。受け取ってすぐに聞かなかったことを、本当に後悔しました。
 その声を聞いたら、もう他の方は全く考えられない。大河そのものの声が、そこにはありました。
 それが7枚、大河を演じてくださった方です。
 現在はアニメ業界でも大人気の方です。
 私はその頃の仕事の範囲を外れているのに引き受けてくださったその声優さんにも、彼を全力で推してくださった担当さんにも、今でも感謝しています。
 ドラマCDにレギュラーで出てくださっていた声優さんたちは、それはもしかしたら当然のことなのかもしれませんが、みなさん原作小説をきちんと読んでくださっていました。まだCD化が決まっていない先の巻まで読んで、そのときどんな風に自分の役を演じたいか語ってくださったことも覚えています。
 そういうドラマCDでした。機会があれば、是非聞いてみてください。
 そしてこのときのことも含めて、担当さんには、それだけこのシリーズを愛してくださっているんだという感謝がいつでも絶えません。
 2008年の小説Charaに「花屋の店番」を書いて以来、2012年発行のChara全員サービスに「エゴマのゴマはゴマじゃない」を書くまで四年、「毎日晴天!」を一切書いていませんでした。
 その四年間、担当さんは月に一度欠かさず電話をくださいました。
 今考えると、あり得ないことだと思います。他の小説も書いていませんでした。毎月必ず電話をくださって、
「どうですか?」
 と、激しく急かすでもなく、四年間電話を掛け続けてくださったのです。
 それはもちろん、このシリーズを愛してくださったみなさんのおかげでもあります。もちろんそのことには、大きく感謝しています。四年の間も、手紙やメールという形でその声は私に届いていました。本当にありがとう。
 それでもやはり、担当さんの熱意にはただただ、心から感謝せずにはいられません。
 こうしてまた竜頭町の人々を定期的に書かせていただいてる今、いずれはきちんと終わらせなければと思う一方で、久しぶりに彼らを書くのが楽しくて仕方がなくて、もう少し書かせて欲しいと思っている私がいます。
 そんな喜びも、関わってくださっているみなさまのおかげです。
 改めまして、本当にありがとうございます。
 もうしばらく、おつきあいいただけましたら幸いです。  
  1. 2015/11/21(土) 14:04:50|
  2. 毎日晴天!

「はじめの一歩」(2004年02月04日に某誌に書いたエッセイ)

 外付けハードディスクを開いていたら、長らく開けていなかった「エッセイ」というフォルダがあり、もうない雑誌やもうないフリーペーパーに書いたエッセイというか短文が出て来ました。
 版元さえなかったりするので、公開してもいいだろうと自己判断で一日一つくらい公開してみます。そんなにたくさんはないです。
 これは2003年の漫画ランキングに寄せさせていただいた文章です。
 自分でも気に入っていたので、時々思い出していました。月夜野亮宅の近くで、一人暮らしをしていた頃に書いたものです。ちなみに現在は月夜野の下の甥っ子が、全巻揃えているそうです。
 「はじめの一歩」を知る方も知らない方も、良かったらどうぞ。


「はじめの一歩」
 大メジャー作品を1位に持って来てベタな自分がちょっと恥ずかしいですが、2003年は「はじめの一歩」は素晴らしいと改めて痛感した年でした。
 極めて個人的なことですが一人暮らしを始めて、弟所有の「はじめの一歩」とさよなら致しました。年に一回くらい、これはふと手にとって夜通し痛読したい。しかし手元にない。全部で60巻以上ある。もちろん正規の価格で全巻揃える価値のある漫画だ。しかし弟所有の60巻の三分の一くらいは私も出資している。
 と思い悩み、手近な友人、作家の月夜野亮に全巻購入を勧めることにした。
「何処を読んでもたるまずおもしろい。あまさず息を飲む展開でありながら決して読者の期待を裏切らない。登場人物一人一人にしっかりとした背景が書き込まれている。これを今から全く白紙の状態で1巻から新しく読めるあなたが羨ましい!」
 ……毎日言った。しかし言葉だけでは、人は中々こういった長編に手を出さない。痺れを切らした私は5巻までを購入して、中華を食ってる最中に月夜野に、「はいプレゼント」と進呈した。
 以後、彼女が取り憑かれたように全巻を揃え、一時は日々のこともおろそかになり、私を恨んだりしたことは記すべくもない。
 ただ月夜野は! 頭から読むということにこだわらない恐るべき人物で、私はだいたい揃ったところで上前を掠める禿鷹のように「はじめの一歩」をかっさらったのだが、最初の千堂戦が、始まったと思ったら一巻抜けていて次の巻では清々しく終わっている。ヴォルグ戦が抜け、あまつさえ鷹村戦がない! 「わざとなのか!?」と問いたくなるような見事な抜け具合だったのだが、彼女は「誰か気になる人が間を埋めるであろう」と、肝心な箇所が抜けたまま中学生の甥っ子にそれを貸した。少ない小遣いから彼がそこを買い揃えたのは言うまでもない。
 まだ読んだことのないあなたが、1巻からまっさらな気持ちでこの物語を67巻も楽しめるなんて、本当に私は羨ましい。
  1. 2015/11/20(金) 02:12:27|
  2. 何処かに書いたらしきエッセイ

「プロにただ働きさせるとどういうことになるかという一例」

 私自身は、どんなに魅惑的な仕事でも、震災復興関連以外は絶対にノーギャラでは働かないことにしています。
 極端な話、
「一番好きな役者の主演映画の脚本書かせてあげるよ。どんな目にあわせてもいいよ」
 と、言われたとしても(言われないけど例だからね!)、ノーギャラだったらやりません。
 ただ働きしない理由は、対価が払われていなければ、クレジットに責任が負えないから。そのコンテンツを購入した人に、「おもしろかった」と言われて喜ぶ権利も、「つまんない」と言われて胸を痛める権利もなくなるからです。
 私個人としては、それだけです。

 この間、医者ではないのですがまあそんな感じの人と、電話していました。
「ねえ、その、『んっ』ていうの気になる。どうしたの?」
 そう言われました。
 これは、私から仕事をさせたわけではないです。
「ああ、風邪じゃないんだけど。この間からなんか喉が痞えてね。なんだろうな? 自分でも気になるんだよ」
 詳しく症状を聞かれて、最近忙しいのかとか慣れない仕事をしたんじゃないのかとか、諸々尋ねられました。
「薬局に行くと、半夏厚朴湯っていう喉のストレス性の症状に効く漢方売ってるから。試しにそれ飲んでみて。それで治らなかったら医者に行きな。今はたいしたことないと感じてるかもしれないけど、放って置くと大変なことになるから」
 なるほどストレス性なのかと、私はそういう面で彼女を信頼しているので、翌日薬局に行きました。
 探しても探しても見つからず、
「半夏厚朴湯は何処ですか?」
 薬剤師さんに聞くと、レジの裏の棚にありました。見つからないわけだ。
 箱を手に取って、薬剤師さんが固まりました。
 箱には大きく、「半夏厚朴湯 不安神経症の方へ」と書いてある。
 それは私自身も、「え? 私不安神経症の方ですか?」と戸惑うぐらいの太文字ゴシック体でした。ストレス性の喉の痞えだと、私の話を聞いて友人が判断したことは充分理解していたのですが。
 若い女性の薬剤師さんは、私の顔を見て言いました。
「何か、不安ですか?」
 彼女は大概失礼ですが、私がふくふくと幸せそうに見えたのでしょう。実際紅葉を見た帰りで、浮かれていました。
「ええと、特には」
「ですよね」
 間が悪いことに私はそこで、ちょっと咳き込んだんです。風邪っぽい咳をしました。
 そしたら彼女は、
「喉が悪いのは風邪のせいではないですか? 麦門冬湯じゃないですか?」
 と、私に麦門冬湯を渡しました。
 風邪の咳などに効く漢方です。飲んだこともあるし、半夏厚朴湯より安い。
 つい雰囲気に流されてしまい、それを買ってしまいました。
 夜、ちゃんと買って飲んだかと、友人が電話をくれました。
 この顛末と、故に今手元にあるのは麦門冬湯であることを話しました。
 彼女は言った。
「明日薬局に行ってその薬剤師に、おまえのその浅すぎる知識と浅すぎる人生経験で勝手に患者の薬を変えたことを一生後悔させてやると言えー!!」
「そこまで言えば私は間違いなく不安神経症認定されて、半夏厚朴湯を売ってもらえるだろうけど言いたくないです」
 置いてある場所はわかったので、翌日そっと買って来ました。
 やはりストレス性だったらしく(私だってストレスくらい感じることはあるのだ!)今もう喉の詰まりが取れたので、友人には感謝していますが、ただ働きすると仕事中には出ない言葉も出てくるという話。

 編集をしている友人がいます。今まで一度も仕事をしたことがない編集です。
 仕事柄、仕事はしたことがないという編集の友達は多いと思います。
 この間私は、物語の最後の顛末に行き詰まって、彼女に相談しました。
 自分の担当さんに相談しろやという話ですが、立ってる者は親でも使え理論で、そこにいた友人に相談しようとしました。彼女は優秀な編集者であることも知っていたので、相談に乗れよと気軽に頼みました。
「最近Twitterで大流行の、友達のデザイナーに気軽にただで仕事を頼むなリツイート見てないの?」
「うるさいな。私はリストに友達と仕事関係入れてるだけだから、タイムラインがないんだよ。世間のことなんか知るか。ダメ出ししてよ」
「やだよ。ダメ出しなんて、仕事でもう充分疲れてるよ」
「そこをなんとか。30分でいいから。あと一息、自分一人で考えてても全然ここから前に進まないんだよ」
 無理矢理相談して、「こうこうこういうあらすじなんだけど、ラストがどうもイマイチで」という話をしました。
 友人は、
「そもや物語とは何か」
 という話を、いきなりとうとうと始めました。
 悪いけどそんな話聞いてる場合じゃないんだよこっちは、と思い、そこから口論になりました。
「そもそも論は今はどうでもいいんだよ!」
「そのあらすじに一つも楽しみを見つけられないし、テーマもわからない。どちらかを出してくれば、そもそも論なんかこっちだって言わなくて済むんだよ!」
「自分の担当作家にもその態度なのか!」
「担当作家じゃないから本当のことを言ってやってんだ! 担当作家ならもっと丁寧に扱うわ!」
 大喧嘩になるも、本当のことを言われたおかげで私は、「あ、テーマが行方不明だこの話」と気づくことができて、しゃくだったけど最後には礼を言いました。

 彼女は彼女で、私がある創作物に夢中になっているところで、横から話し掛けてきて、
「なんか書かないスカ」
 とか言って来ます。
 こっちはその創作物に夢中なので、話しかけるなようるせーなと思いながら、
「ああ、いいよいいよいつでも書くよ」
 と、適当な返事をします。
 彼女は私のこういう適当さをよく知っていて、この何かに夢中なところをわざわざ狙って仕事の話をしてくるんです。
「原稿料いくら?」
「ピンキリだけど、まあだいたいこんなかな」
「うち弱小なんで。ちょっとお勉強してよ、せんせー。五分の一くらいでどうよ」
「安すぎだろ。せめて半分は出せよ」
「まあまあそう言わずに」
「値切るなよ人の原稿料を」
 冗談に見せかけて、言質を取りに来るんですよ。友人は。

 こういうことは多分、この編集の友人と私がもし実際に仕事をすることになって、会社が絡んで会社から私たちにそれぞれ対価が支払われた場合、全く向き合い方が変わると思います。
 彼女は真摯に丁寧に私の相談に乗るでしょうし、原稿料の交渉は彼女とはせずに会社相手にするから、決定すればその後はお互い遠慮も文句もないです。
 円滑に平和に仕事をしたいときは、ちゃんと見合ったお金を払い、見合ったお金をもらいましょうという一例の話でした。
 友達にただで仕事頼むということは、仕事も友達もなくなるハイリスクを孕んでいるのだ。
 ああ良かった編集友人と仲直りできて。
  1. 2015/11/15(日) 17:46:45|
  2. 日記

「BLに関わる全ての方に謝りたいこと」

 ただの日記です。
 企画さんと、中屋敷さんと、制作さんと、四人で打ち合わせしたときのことでした。
 私が基本BL作家だということで、私を知っている方、もしくは私のことを検索した方などだと思うのですが、
「このリーディングドラマBLですか?」
 と、聞かれるという話を中屋敷さんが始めました。
 最初は、BLだと期待していただいているなら違うと言わない方がいいのか、BLなら観ないという方もいるかもしれないから違うと言った方がいいのか、とかなんかそんな簡単な話でした。
 しかしなんでも深く潜って考える方なのか、そこから、
「そもやBLとはなんぞや」
 と、いささか哲学的な次元に話が移っていきました。
「紀伊國屋のBLコーナーに行くと、え? これもBLなの? というような本も並べてあって、境目がわからない。BLってなんですか?」
 そこから、中屋敷さん、制作さん、企画さんの三人で、BLとはどういう定義のものをBLと呼ぶのかという議論が始まりました。
 私と同じ立場の方はよくわかると思うのですが、こういうとき当事者はただ口を噤むのみです。
 BLに限らず、自分が渦中にあるものは、却って外側にいる人に説明しにくいことってないですか? 説明しにくいし、特に説明する必要もあまり感じないというか。正直、興味のない方にどう定義されてもどうでもいいです。私はですが。
 私はいつまでも黙ってその話を聞いていても良かったのですが、会議室の使用時間がきっちり決まっていたので、全くBL業界の方ではない三人の「BLの定義」トークは果てない終わらない答えが出るわけがないし、それは時間がもったいないなと思ってぼんやりと口を開きました。
「BLは」
 すると、三人は水を打ったように静かになりました。
 本家本元BL作家が、BLをきっちり定義するのを期待したのでしょう。
 正直、なんのあてもなく話を終わらせようと口を開いただけなのに、ガンダーラは何処ですかくらいの勢いで答えを期待されている空気に困り果てました。
 私は人の期待には、なるべく応えたい律儀な人間なんです。
「海です」
 私はあまり嘘は吐かないと思うのですが、たまに適当なことを言うときがあります。この「海」何処から出て来たのか、さっぱりわかりません。
「東シナ海とか、あります」
 なんで最初に出て来たのが東シナ海だったのか、自分でも全くわかりません。
「大西洋などもあります」
 三人は、多分真面目に言葉の意味を必死に汲み取ろうとしてくださっていたのか、私を凝視して話を聞いていました。
「それぞれみんな全く違う海ですが、大きく言えば海は一つです」
 なんであんなことを言ったんだろう……。
「紀伊國屋さんがBLコーナーに置いたら、それはBLです」
 最後は紀伊國屋さんに、丸投げしました。
 形のないBLを、勝手に定義したことを全てのBLに関わる方に謝罪したい。
 BLは、BOYSとLOVEの略称です。
 そんなに難しく考えないでください……。
  1. 2015/11/11(水) 00:09:52|
  2. 日記

「朝彦と夜彦1987」を終えて/菅野彰

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  1. 2015/11/07(土) 03:29:06|
  2. 朝彦と夜彦1987

「朝彦と夜彦1987」を終えて/役者さん達

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  1. 2015/11/07(土) 02:00:00|
  2. 朝彦と夜彦1987

「朝彦と夜彦1987」を終えて/関俊彦さんのこと

 私の職業柄、声優さんのことを語るのには、とても慎重になります。
 「あなたの町の生きてるか死んでるかわからない店探訪します」に登場する声優さんは、ああいう方なのをファンの方がよく知っているので、あんなことも書かせていただける特別な方です。
 それは今回の役者さん達ももちろんそうですが、声優さんのファンの方の愛はとても深いので、その愛情のイメージの邪魔をしてしまうのはあってはならないことだと思っています。私は漫画やアニメの世界の近くに居ますからなおのこと、それぞれお好きなキャラクターのイメージを壊すのも怖くて、慎重になるあまり気軽にお名前も口に出せないこともありました。
 今回、関俊彦さんに観ていただいたことを、関さんに了解をいただいてツイートしました。そこが私には、大きな終わりであり始まりだったので、言いたかったのは私一人のわがままです。
 どれだけ関さんが素晴らしい方なのか、私が知る範囲のことですが知っていただけたらという気持ちもありますので、もし良かったらおつきあいください。
 朝彦は関さんだったと言ったことへの説明も含めて、語ります。
 十二年前関さんには、私が書いた脚本で声のドラマを演じていただいて、そのとき、舞台に呼んでくださいました。
 関さんの声は充分素晴らしいですが、やはり、全身を生き生きとさせる舞台の上の関さんにも、役者さんとしてとても魅了されました。
 当時、関さんにはたくさん勉強させていただいたと思います。
 私が絶対に顔文字を使わないのは、関さんが「言葉を大切にしている証だね」と、言ってくださったことが大きいです。だから今でも決して使いません。
 関さんに演じていただく前提で、朝彦は書きました。
 アテ書きと言いましたが、関さんが朝彦的な人物という意味ではなく、関さんが演じるところを想像しながら書いたという意味です。
 書き上げた、本に掲載されているものと多分ほぼ同じ戯曲を、関さんにお渡ししました。
 まず、叱られました。
 褒めてはくださいませんでした。
 私はやはり小説が本業なので、どうしても自分のイメージ通りの表情、動きがあって、それを全部戯曲には細かく書き込んであります。
「こんなに自由度の低い戯曲では、何も演じることができない」
 最初にいただいたのは、そんなお言葉だったと思います。
 関さんはそれだけ真摯に、この本と向き合ってくださったんです。
「二週間公演したら死ぬけど、死ぬ気でやるよ」
 そう、言ってくださいました。
 その後そのときの話はなくなって、その経緯は最初の日記に書きました。
 関さんは一年のスケジュールを入れるときに、
「上演できそうなら、空けるよ」
 と、メールをくださることもありました。
 今回の上演が怒濤のように決まったとき、度々、関さんのことを考えました。
 まず、私にとってはとても不義理なことだし、でもこのまま何も言わないのもと、何度も考えてなかなか結論が出ませんでした。
 そして、私が知る限り関さんは嘘を吐かない方です。おためごかしを聞いたことが、多分私はないです。私の本をご自分で買ってくださって、熱心に読んで様々感想をくださったときもそうでした。この戯曲だって、最初は叱られましたから。
 だから、観ていただくのが怖かった。
 ツイートしましたが、朝彦の声が無駄にいいのは、関さんありきで書いています。白楽天の詩を読むのは、私が関さんの声で聞きたかったからという部分も大きくありました。
 今回の二人の朝彦には本当に申し訳ないのですが、私が役者さんの力量をわからずに、
「この設定直しましょうか?」
 と、企画さんに言いました。
「大丈夫です。彼らはちゃんとやってくれますよ」
 そう言われて、結果、彼らは充分やってくださいました。
 散々迷って、でも、胸を張って彼らを関さんに誇れるとも思い、ご連絡しました。
 私は長々と、不義理をお詫びするメールを書きましたが、関さんからはとても明るく祝福してくださるメールがすぐに返ってきました。
 結局何も力になれなくてごめんなさいと、書いてありました。関さんのお仕事は、役を演じることです。それ以外の何かを、一切関さんが負う必要はないしそんなことは絶対にさせられません。
 そのメールには、私もすっかり忘れていたことが書いてありました。
「二次選考まで残ったときは、嬉しかったなあ」
 もういよいよどうにもならなくなったときに、私は戯曲の新人賞を探して投稿しました。そのとき確かに、二次選考まで残ったんです。
 私の方は忘れてしまっていて、関さんはずっと覚えていてくださった。
 本当にお忙しい方なので、無理にお時間を作って来てくださいました。どちらのペアかは私が決めたのではなく、関さんが空いているお時間がそこしかなかったので、そちらのペアを観ていただきました。
 きっと喜んでくださると思いながらも、終演後は関さんに会うまで不安ではいました。
 会うなり関さんは朗らかに、
「素晴らしいね、彼ら! おめでとう、本当に良かったなあ」
 そう言ってくださいました。
 その言葉を聞いた途端私は堪えられなくなって、関さんには本当に申し訳なかったのですが、我慢できずに人目もあるのに泣いてしまい、大変困らせたと思います。このことは本当の申し訳なかったです。
 もうほとんどお時間がなかったのですが、楽屋で役者さん達と、中屋敷さんに会っていただきました。
「素晴らしい役者さん達だね」
 そう言って関さんから、彼らに握手を求めてくださいました。
 こんなことを言って、ごめんなさい。二人の朝彦には本当に申し訳ないことだけれど、私はとうとう関さんの白楽天を聞くことができなかった。
 もしかしたら関さんは、お願いしたら機会があれば読んでくださるかもしれません。
 それはでも、私の一つの心残りとして、置いておこうと思います。
 素晴らしい若い才能達と仕事をしているんだねと、笑ってくださいました。
 ここまで書いて、関さんには関さんのお立場があると思い、チェックをお願いしようと思ったら、見ないからそのまま公開してくださいとのお返事がありました。
 関さんはずっと自責の念で過ごされていて、もし私が関さんのことを少しでも良く書いていたら、全部駄目だと言ってしまうから見ないと言われました。長く、謝罪の言葉が書かれていました。
 元のタイトルがきちんと綴られていて、それを最高の形で見せてくださった、中屋敷さん、役者さん、スタッフさんたち全てへの、感謝の言葉も長く綴られていました。
 そんな、関俊彦さんのことでした。
  1. 2015/11/07(土) 01:47:52|
  2. 朝彦と夜彦1987

「朝彦と夜彦1987」を終えて/演出家中屋敷法仁

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  1. 2015/11/06(金) 03:10:20|
  2. 朝彦と夜彦1987