12月25日の話ですが、朝から寒気がしました。熱を測ると平熱なんですが、ものすごい悪寒が続いて、夕方、
「いかん! 高熱の出る前兆なのでは!」
と、耳鼻咽喉科御殿を久しぶりに訪ねました。
4時に受付に行くと、
「3~4時間待ちです」
そう貼り紙がしてありましたが、受付しました。結構な雪が降っていました。
待合室は、顔を真っ赤にして咳き込んでいる人で溢れていて、
「ここにいたら駄目だ!」
と、6時半頃まで病院の近くのファーストフードにいました。ファーストフードは寒く、凍えて、病院に戻るともうすぐ順番。
血圧計があったので血圧を測ろうかと思ったら、おじいさんが腕を入れては、
「たけえな!」
ぼやいてはまた腕を入れて、四回測り直していました。何回測っても血圧は下がらないよおじいさん!
無限の時を待った、私の順番が回ってきました。
御殿先生も患者がどれだけ待っているのかよく知っているので、
「お待たせしてごめんね」
そう、必ず最初に言います。
私は症状を訴え、先生は喉を診ました。
「すごくよく効く薬があるんだよ」
三時間待った私に先生が処方してくれたのは、ツムラの葛根湯……。
「でも先生! すごい悪寒なんです! インフルエンザなのでは! ノロウイルスなのでは!?」
葛根湯では帰れないと食い下がった私に、
「大丈夫だよ。朝から悪寒がしてるなら、もう発症してるから」
御殿先生はやさしくスマイル。
私の悪寒は葛根湯で治りましたが、今度から悪寒がして平熱だったら薬局で葛根湯を買おうと思います。
今年は、事あるごとに、
「あれ? ばあちゃんがいないなあ」
と、思う一年でした。
年明けに出る、「あした咲く花 -新島八重の生きた日々-」も、ばあちゃんに見て欲しかったです。素敵な本になって、私の手元に届きました。
先日母が、十日くらい掛けて読み終わりました。母は新聞は読むのですが、本を読まない人なので、読むのが遅いのです。しかも読みなれていないので、まだ十五ページくらいしか読んでいない段階で、
「この子はどうなるの? この人どうなるの?」
と、書いた私を捕まえて質問攻めです。
「読んだらわかりますお母様。読んで下さい」
「だって気になるじゃない」
「読んで下さい」
中盤出て来る人物を読んでは、
「なんなのこの人! 腹立つわ!」
書いた私に文句。
読了して、
「良かったわ。あれあんたが書いたの?」
と、最高の賛辞を頂きました……本当に本当に良い読者だと思いましたが、十日間目茶苦茶うるさかったです。
来年も地道にお仕事が出来たら嬉しいです。お付き合い頂けたら、なお嬉しいです。
良いお年を。
- 2012/12/31(月) 17:29:29|
- 日記
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WINGS2月号、「帰ってきた海馬が耳から駆けてゆく」連載中です。今回は、「あした咲く花-新島八重の生きた日々-」を書いている時の、私の錯乱ぶりを赤裸々に綴ってみました。
昨日は女友達と二人で、クリスマスしゃぶしゃぶをしました。クリスマスイブのしゃぶしゃぶ屋さんは空いていると知りました。いいの楽しかったの。
友人、M子の実家では、先日お姉さんの三人目の赤ちゃんが生まれたばかり。
「おんばさまって知ってる? うちの地元だけの風習なのかな」
彼女は言いました。彼女と私は、住んでいる町が違います。
「知らない」
「安産のお参りに行くんだけど、おんばさまが、生まれてくる子が男の子か女の子か占ってくれるの。蝋燭に火を点けて、火が真っ直ぐになったら男の子。揺れたら女の子。お姉ちゃんが安産祈願に行った時に、火が揺れて」
それで彼女は、行けなかったおばあさまに、
「おんばさまに行ったら、火がこうなってね」
と、手を揺らして火の様子を示したら、
「ああ、じゃあ女の子だな」
そう、おばあさまがおっしゃったそうです。
やはり行けなかったおばさまに、
「火がこうなってね」
と、手を揺らしたら、
「ああ、じゃあ女の子だね」
と、言われたと。
「みんな知ってるんだねえ」
なんだか素敵なことだなと、しみじみ聞いてしまいました。
そんな彼女の、先日の選挙の折、小泉純一郎の息子、小泉進次郎が会津に遊説に来たときの話です。
私の地元でも進次郎は演説をしていて、田舎なのでテレビに出てる人が居るだけで結構人が集まりました。その後進次郎は、友人の勤め先の近くに行ったらしく、彼女は同僚に、
「おい、小泉の息子来てるぞ」
と、言われて、
「え!? 孝太郎!?」
そう喜び勇んで出て行こうとしたら同僚に止められて、頭に手を翳され、
「おまえの頭はあったけえなあ。ああ、あったけえ」
と、有り難がられたそうです。
私はこの間彼女が、萩尾望都の「11人いる!」を読んだことがないというので、
「え? あの不朽の名作を読んだことがないの!?」
驚いて貸そうとしたら見当たらないので、新しく文庫を買いました。梱包が過剰だと良いながらいつでもあまぞんさんにお願いしてしまう私の元へ、翌日届けられた包みを開けたら、文庫版「11人いる!」の帯に、
「不朽の名作」
と、書いてあって、私は一文筆業としての己の表現力の限界を感じて、その場で筆をばっきり折りました。
今、折れた筆でこの日記を書いてします。
おんばさまに「女の子」と占われた男の子が先日無事生まれて、友人が昨日素敵な写真を見せてくれたので、許可を得て上げさせて貰います。
本当に小さいね。
- 2012/12/25(火) 12:50:10|
- 日記
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ちょっと前の話ですが、久しぶりに総武線というか中央線沿線の、私の変な美容師に髪を切って貰ってきました。
予約の時間に、私はちょっと遅刻をしてしまい、入店したときから慌ててはいました。あわあわしながら席に着き、
「この間、どうだった?」
と、聞かれたので、前回友人の誕生日会で彼が私の髪を巻いてくれたことかと思い、
「え? ああ、大好評だったよ」
ちょっと盛ってそう答えたら、
「そうじゃなくて、誕生日会」
「ああ! 盛り上がった! ありがとう、お陰でティアラ買えたよ」
ティアラのことは、九月辺りの日記参照。
そんな具合に最初話が噛み合わなかったので(と、いうか彼とちゃんと話が噛み合ったことはないような気がしますが)、
「私……まともに人と喋るの、ほぼ一ヶ月ぶりなんだよね」
謙虚にそうカミングアウトしたら、
「ああ、どうりで……」
やつは本当に失礼な相槌を打ちました。
「まあ、そういうことなら思い切り喋っていって」
と、言いながら彼は10分くらい無言で私の髪を弄っていました。
「あのさ、さすがに私も一人では喋れないんだけど」
あまりにも長い沈黙に訴えると、
「だって僕、一ヶ月も人と話してない人と何を話したらいいのかわからない」
そう言いながらも彼は、
「年末は忙しいの?」
とか尋ねて来たので、
「美容院も忙しいんじゃないの?」
と、尋ね返したら、
「今時の若い人は、年の瀬だから髪を切ろうとか思わないらしいよ」
さらっと熟女に失言。
ええ、いえ私若くないですけど、でも。
「いや、若い人って、すごく若い人の話ね」
失言に気づいた彼、カサブタを剥く。
噛み合わないながらも、私が住んでいる辺りがどんだけ田舎かという話になりました。この秋には私の仕事場の700メートルくらい先で、おばあさんが熊に殺されてしまいまして、不謹慎ながらその話をしました。
「目茶苦茶怖かったよ」
その時の恐怖を語ると、彼はどういう思考回路なのか、
「あのさ、熊に襲われるってちょっと、普通ないことじゃない? 保険金ちゃんと下りるのかな? 僕が仕事中に熊に襲われたら労災扱いだと思う?」
普通にそう尋ねて来ました。
知るか。
「でも僕の田舎も、ものすごいど田舎だよ。信じられないくらい家が古くて、家がぎしぎし言っててさ。うちのばあちゃんがすごい静かに歩く人だったんだけど、騒ぐと目茶苦茶怒られたなあ」
ほのぼのと、彼のおばあちゃん話が始まりました。
「お茶の名産地なんだけどね、子どもの頃茶柱立ったことあって、嬉しくて。そんでばあちゃんに見せたら」
なんで私は、どんないい話が始まるのだろうとか、一瞬でも思ってしまうのでしょうか。
「茶柱が立つようなお茶は、古くて悪いお茶だって言われてね」
おばあさま……。
「蛍がいたんだよ、子どもの頃。そんくらい田舎で。ばあちゃんが蛍を見に連れてってくれたんだけど」
それでも私は期待する。
「蛍かもしれないけど、まむしの目かもしれないって言ってさ、ばあちゃんが。なんでそんなところに子ども連れてくんだろうね。そのまむし噛まれたら即死するくらいの猛毒持ってるんだよ」
おばあさま……。
「今も実家、ぎしぎし言ってる」
「じゃあ、お父様とお母様がご実家にいらっしゃるの?」
「え? ばあちゃんも生きてるよ」
なんかね、上手く言えないんですけど、亡くなったおばあさまの思い出話に私には聞こえたんですよ……失礼しました、おばあさま。
「で、ばあちゃんがさ」
「厳しいおばあちゃんが?」
「静かに歩くばあちゃんだよ」
私の問いかけを、彼は言い直しました。
「耳が遠くなっちゃってね。もう全然聞こえなくて、僕の言うことなんか」
ちょっと悲しい話が始まったかと、思った訳ですよ私は。
「会う度どんどん小さくなって、兄貴の嫁さんが大きい声で通訳してくれるんだけど、それが悲しくてね」
そうか、おばあさまは大分はかなくていらっしゃるのだなと、しみじみ聞いてしまったんです。
そしたら、
「ばあちゃん耳聞こえないのにカブ乗ったら危ないよって、言った瞬間にはブーンって走り出してるからね」
「は?」
「危ないよね、耳聞こえないのにカブ乗ったら」
会う度どんどん小さくなるおばあさま、カブをぶっ飛ばしてらっしゃるそうです。
ひとしきりおばあさまの話を聞いて、最後はディズニーシーという公共性の高い話題になりました。
「ミッキーマウス見たことない」
そう彼が言うので、
「私二月に行った時に、ツェペットじいさんと写真撮ったよ。ピノキオと歩いてたんだけど、ツェペットじいさん人気がなくて写真撮れた」
一応、自慢しましたら、
「それは何? 憐れみでツェペットじいさんと写真撮ってあげたの?」
と、咎められました。
私が悪かったよ。
仕上げに何か、ドライ用のオイルみたいなものを付けてくれました。
「付けていい?」
「いいよ」
そしてドライヤーを掛けてから彼は、
「これセレブご用達のドライオイルなんだって、本当かどうか知らないけど。だいたいセレブって誰なんだろうね」
相変わらずの商売下手を発揮して、
「椿油、続けるといいよ」
椿油で充分と言ってくれたので、椿油を続けようと思います。
「おばあさまに、カブ乗らないようにお伝え下さい」
「言っとく」
何屋に来たのかわからない挨拶をして、お店を出ました。
相変わらず、やつの切る前髪はとても短い。
「ららはぴvol.14」発売中です。食べ物エッセイ「旬はヒト時」連載中。今回のテーマは「生牡蠣」です。
- 2012/12/18(火) 20:00:00|
- 私の変な美容師
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