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菅野彰

菅野彰の日記です

「WINGS12月号発売中」

 「帰ってきた海馬が耳から駆けてゆく」連載中です。南野ましろがあいかわらずかわいい楽しい挿絵をつけてくれています。
 今回は、「お友達の話」を書かせて頂きました。楽しいお友達に恵まれているので、お友達を一枚いくらで売り飛ばすよ!
 先日の日記に書きましたが、福島の女子高生の多分ごくごく平均的な(わかりませんが)、日常にも触れさせて頂きました。

 11/10発売の、「小説WINGS秋号」で、「非常灯は消灯中」という観劇エッセイを書かせて頂きます。連載の予定です。

 今、お仕事が近年希にみる危機的な状況に陥っていて(ここのところぼんやり生きていたので)、人間と話せていません。仕事場から夜中に実家に帰って寝て起きて猫にごはんをあげて、また仕事場に来るので、家族とも疎遠です。
 と、いうことに私が気づいたのは、メール嫌いの弟から初めてのメールが来たからです。Twitterにも書きましたが、邦画「アフター・スクール」の若干のネタバレになるかもしれないので、これから観る方はちょっと気をつけて下さいこの先。

 弟に、「アフター・スクール」のDVDを貸しました。弟は観たようで、本当に初めてのメールを仕事場にいる私に送って来ました。
「最初の四分の三解んなかったけど、涙ちょちょぎれた。堺さんがかわいそう。ヨウチャンが」
 弟のメールは何故かここで途切れていて、
「かっこよすぎて、ふざけんな」
 と、続きが来ました。
 弟が日常会話で「涙ちょちょぎれた」と、言うことはありません。
 メールっておもしろいなと思いました。

「人間と話してないんだよね」
 今日、月夜野に電話で言いましたら、
「……私は?」
 と、問われました。
 いや、人間と対面して話していないということですよ。
  1. 2012/10/27(土) 20:50:10|
  2. 告知

「何故なんだどうしてなんだ」

 雪には朝晩、便秘のお薬を飲ませています。私があげていますが、母にお願いすることも多々あります。もう先に私か母があげてしまっているのに、後からどちらかがまたあげてしまって二回上げてしまうことがあります。一応、害のあるお薬ではないようなのですが、そうすると雪がかわいそう。
 ある朝、起きて私が洗面所にいたら、台所の方から母の声が聞こえました。
 私に何か言っているのかと思って台所を覗くと、
「雪ちゃん、お薬もう飲んだ?」
 と、屈んで母が、雪に尋ねています。
「あの、お母様、私もう起きてるんで。良かったら私に聞いてくれますかね。雪たん答えませんよ」
 この話を昨日、電話で月夜野にしました。月夜野のところには、居間に16歳のほとんど眠っている老犬ベスがいます。
「うちなんかみんな言うよ? 『ベス、お散歩行った? 誰と行った? ばあちゃんと行った? ママと行った?』って、人が居てもベスに聞くよ」
 月夜野は普通だと言います。
「『ごはん食べた?』って言うと、食べた時は、『ん』みたいな顔するよ」
「へえ、ベスは正直者だな」
 私はベスに感心しました。
 うちの猫たち、蛍と雪は、
「缶詰貰った?」
 と、尋ねると、
「ニャーニャーニャー! 貰ってないニャー!」
 みたいな嘘をつきます。
 缶詰をうっかり二度あげてしまうことも時々あります。
 私は昨日遅くに実家に帰ったら母が起きてきて、
「秋刀魚ならもうあげたから、あげちゃ駄目よ」
 そう言われたのに、食卓で私が秋刀魚を食そうとしたら、狛犬阿吽みたいに蛍と雪が私を挟んで、
「秋刀魚! 秋刀魚今年初めて見たニャ!」
「初物だニャ! くれニャ! ニャー!」
 みたいな感じで大ハッスルされて、弱い私はちょっと秋刀魚をあげてしまいました。
 さっき猫を飼っている友人にこの一連の話をしたら、
「うちの母は外から帰ってくると猫に、『佐藤さんから電話あった?』とか普通に聞いてたよ。私居るのに」
 と、言っていて、何故なんだろうどうしてなんだろう、でも私も結局、
「缶詰貰った?」
 って、蛍と雪に聞いているわ……と、気づきました。
 ちなみに全くこの日記で存在感のない弟の猫ミイは、いつも母の気持ちを代弁させられています。
「ミイがエアコン寒いって。ミイが窓閉めて欲しいって。ミイがそろそろこたつかなって言ってる」
 ミイじゃないけど、私もそろそろこたつを出したいです。
  1. 2012/10/24(水) 15:47:20|
  2. 日記

「ある時のこと」

 先日の大変冷静さに欠ける日記に、様々なお言葉をありがとうございました。本当に、頂いたお言葉は様々でしたが、無関心より、ずっと有り難いです。

 その日記に、
『友人達は気負うことなく、
「行くよ」
 と、福島を訪ねてくれて、私はある時からそれを「申し訳ない、有り難い」と思うのを自分に禁じました。』
 そう書きました。
 逆の立場から、同じようなことを思われている方々がいらっしゃったので、蛇足ながらそのことを少し書き添えます。
 一昨日私は激昂しましたが、前にも書いた通り福島県はとても広く、私の住む地域には原発近くの町から避難していらっしゃる方がいるくらいです。
 でもまあ、私も「絶対大丈夫」とは言えはしません。放射能や、口に入るものについて。私は直接言われたことはありませんが、今すぐ福島県を出るべきだという意見もあります。
 そういう中で、震災後、状況を理解しながらも友人達が町を訪ねてくれます。地元のお酒も飲んでくれます。お米も水も検査は通っていますが、私はそれも本当は「絶対大丈夫」とは言えません。
 中には、
「別のNちゃん(私)に会いに来てる訳じゃないの。ラーメン食べて温泉入って酒飲みたいだけー」
 なんて言う友達もいます。
 震災の後しばらく私は、そうして気負わず訪ねてくれる友達に、「有り難い」と思っていました。
 ある時から思うことを自分に禁じたのは、特に、きっかけはないです。
 友人達の態度に、私は、
「あれ? 誰か私の友達一人でも、有り難がってくれなんて思ってる?」
 いや、誰も思ってないなと、気づいただけです。
 そしたらもう、「ごめんね、ありがとう」なんて、失礼なことを思うのはやめようと思いました。

 先日の日記で、私の文章力が足りず、少なからぬ皆様に上手く伝わらなかった大事なことがあります。大事なことなのでもう一度書きます。
 このことだけを見て、フランス人がどうと言うのはいやです。それこそが差別そのものです。
 私にも、フランスに大切な友人がいるのに、このことにもっと心を砕いて言葉を尽くせなかったことは、不甲斐ない限りです。

 何かあったらまた激昂すると思いますが、日々は普通に暮らしております。
 今朝、弟と雑談していたら、弟が突然、
「やや、姉さん今日の化粧はどうなさった!?」
 と、言いまして。
 私は仕事場に眉ペンを忘れたので、仕事場で眉を描こうと思っていた訳です。
「これから眉描くんだよ!」
 そう言いましたら、
「ならよかった。麿ですぞ! 姉さん目茶苦茶麿ですぞ!!」
 麿、言われまして。
 本当に細かい男だなこんな弟本当に嫌だ、と、プンスカ怒りながらさっき眉を描いた次第。
  1. 2012/10/19(金) 09:49:47|
  2. 日記

「福島より」

 私は今、とても感情的になっています。
 そういう状態で日記を書いて良いものかと悩みましたが、気持ちのままに、綴ります。
 震災の折り沢山のご心配を頂きましたが、私は福島県に住まいしております。福島第一原発のある、福島県です。
 13日、フランス国営テレビが、前日の日本とフランスのサッカーの親善試合に触れて、司会者のローラン・リュキエが、日本代表のゴールキーパー川島永嗣選手のファインプレーに対し、川島選手の腕を四本に加工した合成写真を披露し、
「福島第一原発の影響だとしても驚かない」
 と、揶揄しました。
 会場には笑いが起きました。
 このことだけを見て、フランス人がどうと言うのはいやです。それこそが差別そのものです。そしてこういったことは震災以来、数多あったことです。私の視界に入るところでも、入らないところでも沢山あることです。残念ながらこれからもあるでしょう。
 10月28日発売の「WINGS12月号」で連載中のエッセイで今回少し触れたので、フライングになってしまいますが、ここでも触れたいと思います。
 震災以来、福島の子どもたちは日常を生きながらも、
「私たちは、結婚を望んで良いのでしょうか? 子どもを得たいと思って良いのでしょうか? 将来どんな差別を受けるのでしょうか?」
 と、悩み苦しんでいます。
 姪っ子や甥っ子たちを見ていると、皆が毎日こんなことを考えているとも、思えません。天真爛漫に日々を過ごし、恋をして、何処の子ども達とも変わらない喜びを得ているようにも見えます。叶うなら子ども達が皆そうあって欲しいと、私は心から願っています。
 しかし彼らの首には時折放射能測定器が下げられ、海辺で教師をしているまだ充分に若いいとこが、
「俺は放射能いっぱい浴びてっから、結婚なんてもう考えらんね」
 と、笑います。
 今月のエッセイには緩く日常を書かせて頂いたつもりでしたが、今回の件を目にして、私はこの怒りと悲しみに口を閉ざしてはならないと思いました。
 もう二度とこんなことが起こらないようにと、願うことは難しいことでしょう。
 けれどなくしたいのなら、声を上げて行かなければならないと気づきました。
 福島に、今私たちは生きています。
 幸い、私はまだ、心ない人に出会ったことがありません。一度もです。
 友人達は気負うことなく、
「行くよ」
 と、福島を訪ねてくれて、私はある時からそれを「申し訳ない、有り難い」と思うのを自分に禁じました。
 旅先で、
「どちらから?」
 そう尋ねられて、
「福島です」
 と、答えると、
「お家は? ご家族は? 大丈夫ですか?」
 見知らぬ人に、心配して頂くことも度々です。
 そうした気持ちでいて下さる方の方が圧倒的に多いのだということも、忘れないように、日々を大切に生きていきます。
  1. 2012/10/17(水) 14:16:03|
  2. 日記

「まだガラ女子」

 先日、友人の加倉井ミサイルの大変素敵な個展が、終了しました。とてもとてもかわいらしい空間でした。
 エッセイに書いたことがありますが、ただの偶然ですが加倉井と私はゼミの同期生です。この個展の時に、ゼミ生で加倉井の絵を見せて貰って、ゼミ会をしました。
 みんなそれぞれ忙しいので、中々全員揃うことはありません。今回も一人いつもなら会える友人が来られなかったのですが、私には七年ぶりぐらいの、少し遠方に嫁いだ友人が来られることになりました。彼女は早くに結婚したので、子ども達も大分手が離れて、
「一人で電車に乗るの一年ぶりくらい」
 それでもそう言いながら、来てくれました。
 なら沢山楽しんで欲しいなと、阿佐ヶ谷のとてもおいしいジェラート屋さんに行き、西荻窪の加倉井の個展に行き、最後に西荻窪のビストロで早めの夕飯を食べました。
 阿佐ヶ谷を歩きながら、ジェラート屋に向かっている全員がガラパゴス携帯だという話になり、
「まだガラ女子、って言うらしいよ。女子じゃないけどさ。何にでも名前付けるのやめて欲しいよね」
 私は最近月夜野から教えられた言葉を、披露しました。
 子ども達の方がまだしもデジタルに強いという話になり、私は七年ぶりの友人に、
「子ども達の方がiPad使いこなしたりするんじゃないの? 友達のところの子どもが三歳半でYouTube観るらしいよ」
 と、言ったら、
「私……iPadって……」
 少し恥ずかしそうに、彼女は言いました。
「割りと最近まで、目の上に乗せて冷やすものだと思ってたの……」
 うん、彼女はそういう人だった! 子ども達のデジタル化も遠いね!
 ところで彼女は会ったときからずっと、ものすごく大きな鞄を持っていました。
「何が入ってるの?」
「赤ちゃんが入ってるの?」
 からかい半分に尋ねる私たちに、彼女は曖昧に笑います。
 一度移動させるのに持たせて貰ったら、ものすごく重い。
 先に書いたように私たちは、最後にビストロに入りました。ここを出たら解散、その段になって彼女は、鞄からある物を取り出しました。
「あのね、荷物になって悪いんだけど。地元の梅で漬けたの」
 それは、一つ一つとても可愛らしくラッピングされた、人数分の梅酒だったのです。
 先に渡したら荷物にさせてしまうと気遣って、そんなにも重いものを、
「何が入ってるの?」
 と、からかわれた鞄に詰めて、彼女は一日持って歩いていてくれた。
 学生の時から何も変わらない彼女の思いやりに感謝しながら、今その梅酒を飲んでいます。
 どんな梅酒も敵わない。
 本当に本当に、美味しい。
 ガラパゴス携帯で撮りました。

umeshu2012.jpg

  1. 2012/10/16(火) 17:52:11|
  2. 日記